全窒素とは何ですか?
全窒素とは水中に存在する窒素化合物の全体をいい、その総量は水質を示す指標となります。
全窒素は、無機態窒素と有機態窒素とに分けられ、そのうち無機態窒素はアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素と硝酸態窒素の3つに分類されます。
またアンモニアが有機物と化学結合して有機窒素となる場合があります。こうした有機窒素は一般に非常に大きな分子構造を持っているーーすなわち安定した状態にあるーー場合が多く、これを処理するには通常多くの時間がかかります。
ちなみに有機窒素とアンモニア態窒素が合わさったものをケルダール窒素と言います。
全リンとは何ですか?
全リンとは、燐酸イオン、ポリ燐酸類など水中に存在するリン化合物の全体をいい、その総量は水質を示す指標となります。
水中のリン化合物は一般に地質由来のものと動植物等の生物由来のものがあります。ただし、工場排水にかぎっていえば、含まれるのはほとんどが薬品成分などからなる化学由来のリンです。生物由来のリンが若干混入してくることはあっても、地質由来のものが混入してくることはまずないといってよいでしょう。
リンが増えると環境にどんな悪影響がありますか?
窒素とリンは植物の生育に欠かせない重要な栄養素です。そのためそれらが河川や湖沼、海域に大量に流れ込むと植物プランクトンなどが増殖します。そうなると、いわゆる富栄養化を招き水質が悪化する原因になります。
窒素とリンはどんな排水に多く含まれていますか?
養豚場、養鶏場、牛舎等の排水には窒素が多く含まれています。また酸化剤を大量に使用する化学工場や食品加工工場の排水中からも検出される場合があります。
一方、クリーニング店、工場、ホテルおよび病院などの排水にはリンが多く含まれています。
全窒素または全リンの値が上昇したかどうかはどうやって判断しますか?
目視や臭いをかぐなど人の感覚に頼った判断はまず不可能です。リンも窒素も溶解しているので見た目では全くわからないし、臭気もほとんどないからです。残念ながらここは簡易分析キットを使うか、第三者機関に水質分析を依頼する以外、方法はありません。
なお水質を分析する場合、センサーによる自動分析システムを導入するのもひとつの方法です。センサーを使えば測定にかかる手間暇とコストが省けますし、なにより不測事態を事前に防止することができるからです。その意味で一石二鳥、いや三鳥、四鳥といってもよいかもしれません。
全窒素(または全リン)の値を下げるにはどうすればよいですか?
どちらも専用の排水処理設備を使うことで数値を下げることができます。
通常、全リンは排水処理工程のひとつである生物曝気処理中にバクテリアの細胞壁の中に格納されて処理されます。この際、炭素:窒素:リン=100:5:1という比率で微生物処理が行われます。たとえば排水中の窒素が50ppm、リンが10ppmだとすると、BODが1000ppm以上あれば計算上、窒素もリンもキレイに除去できることになります。
またリン単体は、凝集剤による化学処理で簡単に処理できます。
窒素は通常「脱窒反応槽」という生物処理システムで処理します。高濃度の窒素処理、しかも無機排水の場合には、上で挙げた比率になるように炭素とリンを脱窒バクテリアの栄養源として添加投入しながら処理する必要があります。
なお窒素とリンの処理に関しては硫黄酸化脱窒処理システムという画期的な方法もあります。詳しくはレスキューチームまでお問い合わせください。
現在、工場から出る廃水は全て下水道に放流しています。排水処理施設はとくに設けていません。下水道局には、超過金として毎月50万円を支払っています。しかし昨年末に下水道の受入水質基準が見直されたことから当局の監視が厳しくなっています。とくにリンと窒素の基準値超えに対して厳しい視線が注がれています。どうしたらよいでしょうか?
現在排水処理設備がないとすると考えられる方法は化学的な処理しかありません。具体的には凝集剤を使って排水中に含まれるリンを除去するという方法です。ただしこの方法ではリンしか除去できず、窒素の除去はできません。
窒素には、アンモニア態窒素と亜硝酸態窒素と硝酸態窒素の3つがあります。このうちアンモニア態窒素に対しては、ゼオライト等によって吸着除去する物理化学的な方法がありますが、硝酸態窒素に対しては使えません。そのため、もし窒素とリンの両方を除去したいというのであれば残念ながら現状では専用の排水処理設備に頼る以外、手立てがありません。
ちなみにメッキ工場などで使う特殊なそれを除けば、リンは化学処理によって容易に除去できる性質があります。そのため、リンの除去だけに絞るのであれば通常、それほど難しい処理は要りません。ただし薬剤の量は排水中に含まれるリンの濃度に応じて変化しますので、リン濃度が高ければ薬剤の量も増えることになり、当然ながら、それなりにコストがかかることは覚悟された方がよいでしょう。