工場排水とは
工場で何かを製造した場合、ほとんどの場合、廃棄物が発生します。その廃棄物のうち汚水として処理されるものを工場排水といいます。
多くの場合、排水には毒性があるので下水や周囲の河川などにそのまま放流するとそれらに悪影響を及ぼすおそれがあります。
そのため、排水処理にあたってはその毒性が基準値を超えないよう水質汚濁防止法などで厳しく制限されています。
処理しないと具体的にどんな影響がありますか?
環境が汚染され、人々の健康と生活に重大な影響をおよぼします。
年配の方なら覚えておられるかもしれませんが、半世紀前の日本は大気汚染と水質汚染の見本市のような状態でした。
当時、工場から排出される煤煙と汚水によって太陽の光は一日中遮られ、近くを流れる川はまるで絵の具を溶かしたかのような毒々しい濁流へとその姿を変えていました。さらにそこへ追い討ちをかけるように時折襲ってくる光化学スモッグと悪臭が多くの住民を悩ましてもいました。
背景にあったのは高度経済成長にともなう経済優先の風潮です。経済活動が重視されるあまり、工場からの排出物に対する規制がゆるく、煤煙や汚水が事実上、垂れ流しの状態だったのです。
象徴的なのがその当時、日本中で大騒ぎになった公害問題です。
なかでも有名なのが水俣病やイタイイタイ病です。これらは排水から流れ出た水銀やカドミウムによる生活水系の汚染が原因でした。
こうした深刻な環境汚染をきっかけに工場の排水にも厳しい規制がかかるようになったのです。
あれから半世紀、あれほど汚染されていた自然環境が本来の姿を取り戻しつつあるのは喜ばしいかぎりです。もちろんその裏に多くの技術者による努力と奮闘があったことはいうまでもありません。しかし、だからこそ今に生きる私たちにはこの美しい自然を将来世代へそのまま受け渡せるよう、不断のそしてさらなる努力が求められていることも忘れてはならないでしょう。
工場の排水にはどんな種類がありますか?
明確な区分があるわけではありませんが、強いて種類分けすれば無機系と有機系とに分けられます。当然ながら金属を取扱う業種の工場から出る排水はおおむね無機系のそれとなり、食品や医薬品の工場から出るのは有機系の排水となります。
工場から出る排水にはどんな規制がありますか?
工場の排水に対しては、環境省が定める「一律排水基準」によって規制がかけられています。
https://www.env.go.jp/water/impure/haisui.html
また、それとは別に各都道府県の判断により独自の基準を設けた「上乗せ排水基準」があります。
規制対象となる事業者は、それらの基準を遵守する義務があると同時に万一遵守しなかった場合、罰則が科されることになります。